水素時代の到来

気候危機を解決するために不可欠なのは、責任ある化学です。

様々なエネルギー問題を解決する重要な化学

化石燃料は人類の進歩に大きな影響を与え、人類にイノベーションと繁栄をもたらしてきました。それと同様の恩恵を受けつつ、より持続可能な方法で進歩を促すことが重要になってきています。再生可能エネルギーが化石燃料にとって代わりつつあり、Chemours(ケマーズ)の責任ある化学により、まったく新しいエネルギー経済が始まろうとしています。

歴史的な変化

エネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合は増加の一途をたどっており、新型コロナウイルスの流行もあって、その変化は加速しています。

パンデミックに伴う生活、仕事、レジャーの変化が排出量の抑制につながっています1。運輸分野の燃料消費量は以前に比べて大幅に減少しており2、仕事や生活のパターンが変化していく中で、今後数年間はこのような状況が続くと思われます。  例えば、在宅勤務は今後も続いていくでしょう。

影響を受けるのは運輸業界だけではありません。再生可能なインフラやイノベーションへの投資を含め、エネルギー分野全体が揺れ動いており3、クリーンなエネルギー源はすでに、将来の望ましいエネルギー源として化石燃料を凌駕しています4。予測では、2020年の新たなエネルギー発電量の90%が再生可能エネルギーになると見込まれています5。柔軟性とコストが重要視される現在、社会的な圧力と単純な経済性が相まって再生可能エネルギー源の魅力はとりわけ増しています。

ですが、太陽光や風力だけで十分でしょうか。

水素経済の到来

排出量を大幅に削減しようとするなら、エネルギー生産を脱炭素化する必要があります。その方法の1つが水素経済です。再生可能エネルギーで水素を作ることで、排出物ゼロ(エミッションフリー)のエネルギーシステムを実現できます。また、そうすることで、再生可能エネルギーの数少ない欠点の1つを克服し、世界のエネルギー経済にネクストノーマル(次の日常)をもたらすことができるのです。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは発電量が不安定です。風が吹いたり、太陽が照っていたりするときに発電し、順調な稼働を維持できるかどうかはTeflon™コーティングやKrytox™高性能潤滑剤などの高度なふっ素樹脂に依存します。では、太陽が隠れたり、風が弱まったりするとどうなるでしょうか。晴れた日、風の強い日に発電した電力が蓄えきれないときはどうしたらよいでしょうか。そこで登場するのが水素です。

エネルギーにとって欠かせない化学

Nafion™プロトン交換膜および分散液のようなイオン交換材料の優れた化学的特性により、私たちは太陽光や風力発電の電力をクリーンな水素に瞬時に変換できます。Nafion™膜を使うと、再生可能エネルギーの余剰電力を利用して、水を水素と酸素に分解できます。その結果得られる水素は、ほぼ理想的な燃料になります。変換することで高品質な発熱が得られ、排出されるのは純粋な水蒸気のみです。

エネルギー集約型の産業プロセスでは、製鉄やアンモニアの生産など、現在は石炭が大部分を占めている低炭素化が難しい分野で水素を原料として利用できます6。実のところ、水素は最終的にすべての製造業の動力源となる可能性があり、鉄鉱石を還元するコークスの代わりにもなります。

製造はほとんど目に見えないところで行われていますが、水素の利用法の中で最も注目されているものの1つがすでに出現しており、水素の力を世に知らしめようとしています。実際、水素エネルギーというと、水素燃料電池を搭載した自動車やバス、トラックを想像する人が多いはずです。ただし、その水素が効率的かつ確実に機能するには高品質の膜が必要であり、Nafion™膜および分散液は発電し続けるために最適です。

水素はさらに身近なところにも登場します。その長所は、用途によっては既存の天然ガスのインフラを利用できることです。水素をガスグリッドに注入することで、最小限の改修で家庭やビル、産業用の暖房に使用できます。

最高のエネルギー源

水素経済への転換は大変な事業のように思えますが、その技術はすでに確立されています。Nafion™など、基本的に必要な膜は、実用規模のプラントで課される厳しい条件や、自動車、トラック、バスなどで日常的に酷使される際の条件に耐える強度と性能範囲を備えています。

問題は規模です。水素の製造コストは、再生可能エネルギーと水の電気分解による水素の大規模な生成によって大幅に削減されるでしょう。バリューチェーンを通じた水素開発への組織的な支援と政策立案が組み合わされれば、風力発電や太陽光発電ですでに実現しているのと同じように、コスト削減を加速できるはずです。

ただし、動きは見えています。例えば、欧州連合(EU)はまさにこれを実現するため、化石燃料を再生可能エネルギーで作られた水素に置き換えるという地域全体プロジェクトを開始しました。水素を基盤とする経済に切り替えることにより、EUは2030年までに二酸化炭素排出量を45%削減し、2050年までに実質ゼロにすることを目指しています7

また、2040年までに燃料電池車を100万台から1,700万台に増やし、二酸化炭素排出量を大幅に削減する考えです8。何といっても、運輸部門はCO2排出量の3分の1を占めているのです9

米国の次期政権は、EUにならって経済の脱炭素化に投資を行う考えのようです。今後4年間で太陽光発電や風力発電に2兆米ドルを投資し、2035年までに米国の電力セクターを二酸化炭素排出量ゼロ(カーボンフリー)にし、2050年までに排出実質ゼロにすることを目標とした計画が進行中です10

再生可能エネルギーが増えれば、水素を作るための余剰エネルギーも増えるため、コストが下がり、再生可能エネルギーの競争力がさらに高まります。近いうちに、古い格言を変える必要があるでしょう。日が出ているうちに「干し草」を作る(英語で「好機を逃すな」という意味のことわざ)のではなく、「水素」を作るのです。

[1] https://www.sciencedaily.com/releases/2020/10/201014082806.htm

[2] https://www.nature.com/articles/s41467-020-18922-7

[3] https://www.nature.com/articles/s41467-020-18922-7

[4] https://www.weforum.org/agenda/2020/06/coronavirus-covid19-fossil-fuels-energy-demand-change-climate

[5] https://www.theguardian.com/environment/2020/nov/10/renewable-energy-covid-19-record-growth-2020

[6] https://www.fch.europa.eu/sites/default/files/Hydrogen%20Roadmap%20Europe_Report.pdf

[7] https://www.fch.europa.eu/sites/default/files/Hydrogen%20Roadmap%20Europe_Report.pdf

[8] https://www.renewableenergymagazine.com/miscellaneous/europe-goes-allin-on-hydrogen-for-the-20200928

[9] https://www.fch.europa.eu/sites/default/files/Hydrogen%20Roadmap%20Europe_Report.pdf

[10] https://www.ft.com/content/84197f76-3d34-400c-8915-2f511fa43a99

[11] https://www.hydrocarbonprocessing.com/news/2020/09/fossil-fuel-demand-to-take-historic-knock-amid-covid-19-scars